心臓はほぼすべて筋肉でできています。筋肉はその活動のために沢山の血液を必要とします。その血液を心臓の筋肉まで運ぶ血管を冠動脈と言います。心臓の出口からすぐに枝がでて心臓自身に血液を送りこむようになっています。この冠動脈は動脈硬化の影響を受けやすく、この冠動脈が急に閉塞する病気を心筋梗塞と言います。心臓の筋肉に血液が届かないため、心臓の動きが極端に悪くなり生命の危険にさらされます。
冠動脈の血液の流れをよくするために使われる薬の一つが、アスピリンです。血小板は血液を固まらせる働きがあります。アスピリンはその血小板の働きを邪魔する作用を持っています。血液を「さらさら」にする薬と言ってもよいでしょう。現在では新しく開発されたクロピドグレルという薬を投与することもあります。
このアスピリンやクロピドグレルを心筋梗塞で運ばれてすぐに患者さんに用いると、用いない場合と比べてその後の経過が良いことが知られています。したがって、心筋梗塞の治療の手順にこれらの薬の投与を組み込む事が求められます。ここに算出する値はより100%に近い値になることが望ましいということになります。
全日本民医連の2012年データ(74病院)では最小値が0%、最大値が100%とかなりばらついていることが分かります。これは詳しく見るとほとんど急性心筋梗塞を受け入れていない病院のデータも含んでいます。対象患者数が少ないとばらつきが大きくなります。そこで年間20件以上の急性心筋梗塞を受け入れている16病院のデータをさらに調べてみました。最小値は62.5%、中央値87.2%、最大値100%となりました。当院は、診療圏内で最も先進的に心筋梗塞に取り組んでいる病院の一つですが、中央値以上の値となっています。
当院では年間4人にアスピリンを投与出来ていませんでした。その4人について調べてみると3人はクロピドグレルを投与しており、一人は24時間を超えてクロピドグレルが投与されていました。
実質的には100%の達成率で、厳密には57/58=98.3%の達成率になります。当院の心筋梗塞治療は標準的な医療に準拠していると言えます。すでに達成している事項をその後も調べ続けることは無意味ではありませんが、あらたな業務改善にはつながりません。当院の場合には別の指標を検討することが必要かもしれません。
また、今後は当院としてはアスピリンのみではなくクロピドグレルを投与した患者も含めた集計を行うべきことも理解されました。
各指標の計算式と分母・分子の項目名 | 分母・分子の解釈 | |
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分子 | 病院到着時間から24時間以内にアスピリンが投与された患者数 |
入院時間は、来院時間(救急車到着時間)とする。アスピリン投与時間は、アスピリンを処方した時間とする。 【分母・分子除外規定】
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分母 | 当該月に主病名が急性心筋梗塞で退院された患者数 | 急性心筋梗塞の患者で再梗塞も含む。待機的な治療目的の患者は除く。入院中の発症は除く。 |
年度 | 最大値 | 中央値 | 最小値 |
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2012年 | 100.0% | 80.0% | 0.0% |