救急車で運ばれ一刻を争う状況で行う緊急手術の場合には詳しい検査をするいとまがないことも多いのですが、予定して行う手術の場合、入念に準備をした上で手術が行われます。それは手術は簡単にやり直しがきかないという大前提があるからです。ここに算出する一度行った手術の後の再手術は、予定外の重大な事態が起きたことを意味します。当然ゼロとなることが望ましい値です。

念のために言い添えておくと、同じ手術でも患者さんによってその難しさが異なります。大学病院やがんセンターなどでは、より手術の難しい患者さんや治療に難渋する合併症を持っている患者さんが集まりやすいものです。そのため高い技術を持っていても成功率はそれほど高くないように見えるということも起こりえます

したがって他の病院との比較には注意が必要です。再手術割合が不自然に高い場合には技術上の問題を抱えているのかもしれません。そうでない場合には、技術や管理上の問題がないか考察する資料として経年的な数値の推移をみていくことになります

手術後30日以内の緊急再手術に48時間以内の患者さんも含まれてしまうので、30日以内の再手術について今回は検討します。いずれにせよ、2011年は1,000件を超える手術を行って1件のみ発生しています。2012年は3件です。割合でみると全日本民医連のデータのほぼ中央値に近い値です。しかし、傾向を論じるにはあまりにも生じている件数が少なすぎます。逆に一例一例詳しく反省を加えることができるということでもあります。当面は、このような事態がなぜ起きたのか、医療技術や管理の根本に弱点を持っていないか、ひとつひとつ振り返ることが最も有効な手だてと思われます。

指標の計算式、分母・分子の解釈
  各指標の計算式と分母・分子の項目名 分母・分子の解釈
分子 A)手術後48時間以内緊急再手術数
B)一入院期間中の手術後30日以内緊急再手術数(手術後48時間以内含む)
B)について、例えば脳血管疾患で手術・入院し、骨折等で再手術した場合は除く。
分母 入院手術数(入院手術を行った退院患者数) 手術室で行なった手術。カテーテル、内視鏡は除く。
全日本民医連2011年60施設、2012年70施設参加「医療の質向上・公開推進事業」データより
年度 A.入院手術患者の術後48時間以内緊急再手術割合 B.一入院期間中の手術後30日以内緊急再手術割合
最大値 中央値 最小値 最大値 中央値 最小値
2011年 14.30% 0.11% 0.00% 14.30% 0.81% 0.00%
2012年 1.70% 0.08% 0.00% 4.00% 0.30% 0.00%