救急医療の白眉のひとつがここに取り上げる心肺蘇生法の成功でしょう。救急車で患者さんが運ばれて、医師や看護師が心臓マッサージや人工呼吸のかたわら様々な処置をします。その結果心臓の動きが戻り、入院して治療継続できるかどうかが一つめのポイント。患者さんの多くはとても重篤な状態ですので入院後も何が起きるか分かりません。入院後も治療が奏功し退院できたかどうかがもう一つのポイントとなっています。
脳は血流が滞って5分ほどで取り返しのつかない変化が生じます。それ以前に救命救急処置が開始されるかどうかが大切になります。したがって救急隊が駆けつける前からこの処置が開始されなければ成功率も上がらないということになります。アメリカでは日本に比べて格段に救命率が高いと言われています。病院の技術や体制ばかりでなく、地域社会の中でどれだけ救急医療への意識が高いかも重要な要素と考えられます。
全日本民医連のデータでは生存して退院した患者さんの中央値は0%となっています。いかに生きて帰すことが難しいかが分かります。2012年の300床以上、DPC病院、基幹型臨床研修指定病院の14病院に絞って比較してみても、生存退院の中央値は3.3%です。当院はこの中央値よりやや高い値ですが、人数で話をすると125人が運ばれて最終的に3人しか生存してお帰しできなかったことなります。当院の救急部の医師は救急隊と定期的にミーティングを持つなど連携に日常的に取り組んでいます。あるいは発見した方々に救急隊を呼ぶだけではなくすぐに救命処置を開始してもらうような啓蒙活動も重要なのかもしれません。取り組む範囲は病院内にとどまらないため、すぐにこの数値が向上するかどうかは疑問です。地道な努力の成果として徐々に向上していくことを期待しています。
各指標の計算式と分母・分子の項目名 | 分母・分子の解釈 | |
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備考 | 半年分で集計 | |
分子 |
A)心拍再開し入院した患者数 B)そのうち生存退院した患者数 |
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分母 | 救急搬入された来院時心肺停止患者数 | 退院患者のうち、入院契機病名が蘇生に成功した心肺停止(I46.0) |
年度 | A.心拍再開割合 | B.心拍再開し生存退院した患者の割合 | ||||
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最大値 | 中央値 | 最小値 | 最大値 | 中央値 | 最小値 | |
2011年 | 100.0% | 26.5% | 0.0% | 100.0% | 0.0% | 0.0% |
2012年 | 100.0% | 14.3% | 0.8% | 50.0% | 0.0% | 0.0% |