日本人の疾患別死亡率は高い順に悪性新生物、心疾患、肺炎となっています。これまで長らく第3位だった脳卒中を抜いて肺炎が3位に入りました。高齢な方々が多く肺炎で死亡していることの反映です。

市中肺炎とは、一般の方々が日常生活の中で罹患する肺炎という意味です。入院中など特別な状況でなってしまう肺炎と区別して対策などが考えられています。

肺炎はよく聞く病名ですし数の多い疾患です。しかし原因となる病原菌は多岐にわたり重症度も様々です。病院全体の感染症に対する学習の程度、専門医の充実度、ICUなど重篤な患者さんを治療する体制の整備の程度などが総合的にこの死亡率に影響するものと思われます。そういう意味で、それぞれの病院の急性期医療の水準をある程度反映していると考えられます。

比較的軽症の肺炎が集まる病院ですと死亡率は高くなりませんが、地域の中で重症の患者さんが集まる病院ですと、充実した体制を持っていても死亡率は度高くなってしまうかもしれません。そこでここでは、重症度別に分けて死亡率を出そうとしています。

当院の場合2012年の死亡率はそれぞれ軽症0.0%(0.0%)、中等症5.5%(4.9%)、重症16.0%(12.3%)、超重症35.0%(38.2%)となっています(カッコ内は全日本民医連の300床以上、DPC病院、基幹型臨床研修指定病院の14病院の中央値)。おおむね中央値に近い値になっています。

グラフに見るように2011年よりは少し死亡率は低下しています。治療技術の進歩の反映や医師体制が強化されたことの影響など要因についてはいくつか考えられます。今後も当院の急性期医療の水準を表す一つの指標としてこの値の推移を見ながら当院の医療提供体制について検討していくことになります。

指標の計算式、分母・分子の解釈
  各指標の計算式と分母・分子の項目名 分母・分子の解釈
収集期間 1ヶ月毎
備考 日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」市中肺炎の診断基準を満たすもの、重症度別 肺炎は民医連のDPC病院ではいずれもトップの診断群。「指標:死亡退院患者割合」の全体の死亡率だけでは、疾患構成やその重症度も異なり、評価が難しい側面がある。2010年度から、DPCの様式1で入力必須項目に加わったこともあり、とりくみやすい項目と考える。
分子 市中肺炎患者死亡患者数(成人):A)軽症、B)中等症、C)重症、D)超重症 その月に死亡した件数を入力する
分母 退院した市中肺炎患者発生患者数(成人):
A)軽症、B)中等症、C)重症、D)超重症
市中肺炎で入院し退院した患者件数を重症度別に算出する。
  • 使用する指標:
    1. 男性70歳以上,女性75歳以上
    2. BUN21mg/dL以上または脱水あり
    3. SpO2 90%以下(PaO2 60Torr以下)
    4. 意識障害
    5. 血圧(収縮期)90mmHg以下
  • 重症度分類:
    軽度
    上記5つの項目の何れも満足しないもの
    中等症
    上記項目の1つまたは2つを有するもの
    重症
    上記項目の3つを有するもの
    超重症
    上記項目の4つまたは5つを有するもの。ただし、ショックがあれば1項目のみでも超重症とする。
  • 他の病院・施設から転院してきた患者は除く。
  • 重症度の判定は入院時とする。
  • ICDコードJ13$~J18$を対象(15歳以上で、入院前1ヶ月以内の入院歴、療養病院・施設滞在者を除く)とします(040070 インフルエンザ、ウィルス性肺炎 =ICD:J10$、J11$、J12$は除きます)。
全日本民医連2011年60施設、2012年70施設参加「医療の質向上・公開推進事業」データより
年度 最大値 中央値 最小値
市中肺炎患者死亡率(成人)A~D合算割合
2011年 5.8% 1.1% 0.1%
2012年 6.3% 0.1% 0.0%