身体抑制とは、たとえば点滴の管が抜けないように患者さんの手足を縛って固定することを言います。さらにベッドの柵で患者さんがベッドから降りられなくすることなども含みます。身体抑制は病院では極力避けるべき行為である事は、一般職員に周知されています。その医学的弊害を述べる以前に尊厳としての問題が論じられなければなりません。しかし急性期病院では、認知機能の低下した高齢者の増加に伴い、治療に協力してもらえない患者さんへの対応に苦慮しているのも実情です。実際に、治療の必要性や緊急性のためにやむをえず抑制を行わざるを得ない場面があります。この指標を追跡する事で、当院が安易な抑制を行っていないか、なるべく早く抑制を解除する努力をしているかを検証することができると考えています。

当院の結果は全日本民医連のデータと比較すると抑制している日数も抑制した割合もかなり多い結果となっています。この結果は実感とはやや異なるため、本当に当院がこれほどまでに抑制をしているのかどうか、すなわち正確に算出できているのかどうかが問題となりました。

当院では今まで、ご家族に身体抑制の承諾書を頂くための用紙を発行した日付とその数をコンピュータ上で数えることで算出していました。実際には先に承諾書を頂きながら抑制しなかった例も多数あることが分かってきました。つまり、現状を正確に反映しない算出方法をあらためることが、当面のQI委員会の重要な課題であることがわかりました。

算出のための手順の大切ですが、なによりも安易な身体抑制を行わないための現場の取組みが本質的な課題です。身体抑制そのものを減らすことにも取り組んでいかなければなりません。今後は、取組み方の変更が身体抑制をどの程度減らせたかというより実質的な議論を行うことが求められます。

指標の計算式、分母・分子の解釈
  各指標の計算式と分母・分子の項目名 分母・分子の解釈
分子 身体抑制を実施した延べ日数(A・B共通) 途中抑制やめ、再度抑制した場合も算出する。
分母 A)当月の身体抑制を実施した実患者数
B)当月の入院患者延べ数(退院患者延べ数含む)
4点柵は抑制として算出する。(薬剤は除外する)
全日本民医連2011年60施設、2012年70施設参加「医療の質向上・公開推進事業」データより
年度 A.抑制日数 B.抑制割合
最大値 中央値 最小値 最大値 中央値 最小値
2011年 25.8日 14.4日 7.5日 38.6% 9.0% 1.1%
2012年 28.9日 14.6日 5.1日 37.9% 9.6% 0.7%