回復期リハビリテーション病棟とは、国の定めた基準を満たすリハビリテーション専門病棟のことです。この基準に在宅復帰率が含まれています。

脳卒中などで手足に麻痺が残ってしまった人や股関節の骨折の方々が再度自宅で過ごせるように、いわゆる「生活機能」をあらためて身につけてもらうことがリハビリテーションの理念です。したがって自宅に帰るということはリハビリテーションにとっては非常に大きな意味を持っています。

ご家族が介護の不安を持って自宅退院をためらっている時でも多くの場合、患者さん自身は自宅への退院を強く望んでいるものです。ご家族への情報提供や介護指導、制度の案内など多くの取組みを行う中で自宅への退院が達成されます。そういう意味で、リハビリテーションのチーム力の一面を反映する指標といえます。

2013年は2012年とほぼ同様の自宅退院率となっています。全日本民医連の中央値79.3%より若干下回っています。自宅退院率は患者のADLの自立度の大きく左右されます。そこで2013年の患者について自立度と自宅退院率との関係を検討してみました。

すべての回復期リハ病棟の入院患者は看護師が日常生活機能評価表で自立度を評価しています。それで10点以上を重症と厚生労働省は定義しています。これは自力で座れない、立てない、口から食べることができない状態を指します。

2013年の入院時自立度が重症の患者は全体の32.6%(87人/267人)でした。その自宅退院率は59.8%(52人/87人)でした。一方入院時自立度が軽症の患者の自宅退院率は82.2%(148人/180人)でした。老人保健施設に入所してさらにリハビリを続けた患者は24人いますが、そのうち23人は退院時自立度が軽症の患者でした。

前述のように自立度が軽症(自立度が高い)ほど自宅に帰りやすくかつ老人保健施設にも入所しやすい状況が理解されます。全国の病院でもこのような重症度別に自宅退院率を観察してもよいと思われます。

見た目の成績をよくするためには、比較的軽症の患者を受け入ればよいことがわかります。しかし、当院は地域に根ざしたリハビリテーションを目指しています。重症な患者にも最低限の専門的リハビリテーションを提供したいと考えています。

また自宅退院率には介護力の問題も大きく影響します。入院時軽症でも自宅に帰れない患者の場合、このような問題が強く影響していると日々実感しています。重症の患者を受け入れつつ自宅退院率を高めていくために、介護の問題や経済的な問題も含めてより一層包括的な取り組みができるリハビリテーションチームを目指していきます。

指標の計算式、分母・分子の解釈
  各指標の計算式と
分母・分子の項目名
解釈
備考 回復期リハビリ病棟を持たない病院は対象外
分子 退院先が在宅の患者数 診療報酬上の在宅復帰率に準ずる
分母 回復期リハビリ病棟の退院患者数
医療の質向上・公開推進事業」データより
(全日本民医連 2012年70施設、 2013年83施設参加)
年度 最大値 中央値 最小値
2012年 92.7% 79.3% 67.0%
2013年 95.0% 79.3% 67.1%