一昔前までは、リハビリテーションとは一般の病院で行うものではなく、温泉地など人里離れた病院で気長に取り組むものだと思われていました。しかし、現在では一般の急性期医療の不可欠の要素として考えられています。高齢な患者さんにとって肺炎など急性の疾患は内蔵の病気という枠を超えて体力をも奪う事態です。病気によって筋力や心肺機能を低下させないための取組みが医療の一環として位置づけれられるようになりました。厚生労働省も廃用症候群というこの状態にリハビリテーションを提供することを認めています。臓器治療以外にも生活機能にしっかりと目配りした医療を提供しているかどうかを検討するさいに、このリハビリテーション実施率を知ることが有用となります。

リハビリテーションを行う対象は、医療保険ではしっかりと定義されています。例えば、転倒して骨折した場合は「運動器リハビリテーション」、脳梗塞や脳出血などは「脳血管リハビリテーション」、心筋梗塞や下肢動脈閉塞性疾患などは「心大血管リハビリテーション」、慢性閉塞性肺疾患の方などは「呼吸器リハビリテーション」、がんによる外科手術や在宅療養を目指した末期がんの方などは「がんのリハビリテーション」のように定められています。当院では上記に記した全てに対して施設基準の認可を受けております。

2012年、2013年とも約25%の実施率となっており、全日本民医連の中央値を大きく下回っています。ただ、 当院は総合病院として地域に位置づけられているので、リハビリテーションがあまり必要ない高齢でない患者も多く入院していることが影響していると考えられます。

指標の計算式、分母・分子の解釈
  各指標の計算式と
分母・分子の項目名
解釈
備考 全病棟を対象とする(回復期リハ病棟含む)
分子 リハビリテーションを実施した退院患者(PT、OT、STいずれか) 当月退院患者のうちリハビリを実施した患者
DPCデータを使用する場合、様式1の存在する患者のEファイルの各リハビリ点数コードを用いて算出できる。ただし、一般病棟以外(回復期リハ病棟など)の算出方法については工夫が必要。
分母 退院患者数 -
医療の質向上・公開推進事業」データより
(全日本民医連 2011年60施設、 2012年70施設、 2013年83施設参加)
年度 最大値 中央値 最小値
2011年 77.7% 28.5% 6.6%
2012年 93.1% 33.8% 13.1%
2013年 100.0% 44.4% 16.4%

65才以上入院患者

65歳以上の入院患者の割合は過去3年間の平均は56.5%となり、その他の43.5%の64歳以下の入院患者は骨折や脳血管疾患などの後遺症がなければリハビリテーションの対象とはなりにくいことになります。また64歳以下の多くの方は14日以内に退院していますので当院では65歳以上でかつ15日以上の入院患者を対象としたリハビリテーション実施率分析が必要と考えられます。

分母をみてもわかるように15日以上の入院患者となると半分近くに対象者が絞られることになります。リハビリテーション実施率は3年間の平均で66.9%となり、全日本民医連の中央値44.4%を大きく上回る結果となります。「内科、外科の医学的な問題は解決したけれど、入院中に日常生活能力が低下してしまった!」という課題に対しては、それなりに取り組めていると思われます。

ただ、リハビリテーションが保険適応にならない高齢者の方でも、「体力の低下や転倒が不安、あるいは物忘れがひどくなってきたのでは?」と心配されるご本人や家族に対して、リハビリテーション職員がどのように関わるべきか検討されることが期待されます。

また近年、呼吸リハビリテーション、心臓リハビリテーションなど2次予防に注目したリハビリテーション医療が広まってきています。64歳以下でそれらがあてはまる病態の方に、今後も普及することが期待されます。