身体抑制は、たとえば点滴の管が抜けないように患者さんの手足をベルトなどで固定することやベッドの柵で患者さんがベッドから降りられなくすることなどを含みます。身体抑制は医療倫理の側面からは尊厳の問題として考えなければなりません。病院では極力避けるべきである事は職員に周知されています。しかし急性期病院では、認知機能の低下した高齢者の増加に伴い、治療の必要性や緊急性のためにやむをえず抑制を行わざるを得ない場面も少なくありません。治療に協力してもらえない患者さんへの対応に苦慮しているのも事実です。
この指標を追跡する事で、当院が安易な抑制を行っていないか、なるべく早く抑制を解除する努力をしているかを検証することができると考えています。
昨年来、QI委員会で問題にしていたのはまず身体抑制の有無を正確に算出する手法の確立でした。この間、看護部と協議して電子カルテ上の記録の工夫を行ってきました。また抑制の定義や手順なども見直してきました。
2013年は患者一人当たりの抑制日数も抑制を行った患者の割合もいずれも減少しています。これが現実を反映しているのか、算出方法が厳密になったことを反映しているのかは不明です。
集計では2013年度の当院の結果は、全日本民医連のデータと比較すると中央値に近い値となっています。棒グラフで見るとかなり減少しているので、実際の抑制件数は減っていると思われます。
身体抑制をすると転倒・転落が減るのかという問題については多くの議論があります。一概に身体抑制が転倒・転落を減らすとは言えないというのが正しいようです。しかし個々の場合では転倒・転落予防目的に身体抑制をせざるを得ないと実感される場合も多々あります。当院の場合、身体抑制の減少と治療を要する転倒・転落の増加とが平行関係にあるようにも見えます。患者さんの尊厳を守るために、安全確保しながら、どうしたら身体抑制をなくしていけるのか、検討を続ける必要があります。
各指標の計算式と 分母・分子の項目名 |
解釈 | |
---|---|---|
分子 | 身体抑制を実施した延べ日数(A・B共通) | 途中抑制やめ、再度抑制した場合も算出する。 |
分母 |
A)当月の身体抑制を実施した実患者数 B)当月の入院患者延べ数(退院患者延べ数含む) |
4点柵は抑制として算出する。(薬剤は除外する) |
(全日本民医連 2011年60施設、 2012年70施設、 2013年83施設参加)
A.抑制日数
年度 | 最大値 | 中央値 | 最小値 |
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2011年 | 25.8日 | 14.4日 | 7.5日 |
2012年 | 28.9日 | 14.6日 | 5.1日 |
2013年 | 27.9日 | 14.4日 | 5.1日 |
B.抑制割合
年度 | 最大値 | 中央値 | 最小値 |
---|---|---|---|
2011年 | 38.6% | 9.0% | 1.1% |
2012年 | 37.9% | 9.6% | 0.7% |
2013年 | 38.6% | 10.26% | 0.9% |