手術での最大の敵のひとつが細菌です。しっかり消毒をしたつもりでも細心の注意が必要です。手術をしたところの細菌感染を予防するために、手術の前に抗生物質を点滴することが推奨されています。この世界的に推奨されている感染予防の手順をどの程度遵守できているかをみるのがこの指標になります。手術は外科医以外にも多くのスタッフによって営まれます。手術に関わる部門がシステムとしていかに有効に機能しているかも感じ取れる指標となっています。

全日本民医連のデータを見ると、中央値は90%を超えたところで安定して推移しています。多くの病院で意識的にとりくまれていることが分かります。当院でもこの3年間でこの予防投与を行わなかったのは1人のみですので、ほぼ完璧に取り組まれていることがわかります。手術を行うチーム内で手順の取り決めがしっかり機能していると考えられます。

当院の場合、今後もこの割合はほぼ100%で推移すると予想されます。一方、全日本民医連の中では、高い医療水準にあると思われる病院でもこの値が低いところがあります。先進的にリスクの少ない手術では抗生剤の術前投与を行っていないことも想定され、データ収集の仕方に差があるのかもしれません。全日本民医連として精度をさらに向上させる上では、データ収集や算出方法について実務者間でより具体的に共有化をはかる必要があるかもしれません。

指標の計算式、分母・分子の解釈
  各指標の計算式と
分母・分子の項目名
解釈
備考 診療科により、あるいは医師により投与方法が異なるなどの場合も想定し、3ヶ月毎に各診療科10症例以上となるよう調査期間を設定すること
分子 執刀前1時間以内に予防的抗生剤を投与した数 -
分母 クラス2以下入院手術数(CDCによる清浄度が清潔および準清潔手術)
  • 周術期の感染予防として抗生剤の予防投与が必要な手術。周術期感染予防として抗生剤を使用する対象となるのは、基本的に血管、骨などの無菌部位(クラスⅠ)、または管理された明らかな汚染・感染のない消化管等(クラスⅡ)の手術であり、消化管穿孔や開放性外傷を伴う緊急手術などは除外する。基本的に予防抗生剤投与の必要のない手術は対象外
  • 「清浄度」は手術室清浄度ではなく「手術創清浄度分類」
  • 手術室で行った入院手術のうち、「周術期感染予防として抗生剤の予防投与が必要な手術」を表現するのに、創分類Ⅱ以下とした。
※参考:JANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス)
医療の質向上・公開推進事業」データより
(全日本民医連 2011年60施設、 2012年70施設、 2013年83施設参加)
年度 最大値 中央値 最小値
2011年 100.0% 92.5% 25.0%
2012年 100.0% 96.8% 27.2%
2013年 100.0% 96.8% 51.2%