要約

当院の褥瘡発生率は1%前後から低下しない状況が続いた。褥瘡対策委員会(以下、委員会と略)では2013年度から「褥瘡発生率を前年度よりも低下させる」目標で活動を開始した。

活動の一つ目は褥瘡回診における多職種介入を月1回から週1回に強化したことである。理学療法士らはベッド背上げ時の姿勢保持、背ぬき等を指導し、ポジショニングを再現できるよう手順書を作成・掲示した。薬剤師は創の状態にあった外用剤の選択や塗布量の検討、予防的に保湿材軟膏を使用する等を提案した。検査技師は血清アルブミン値の変動を回診患者リストに記入し、管理栄養士は栄養サポートチームと連携し低栄養患者に介入した。

2つ目は多職種対象の学習会の開催である。褥瘡委員会主体で創傷被覆材やポジショニング等をテーマに全職員向けに開催し、回数、参加者とも増加させた。委員会の中ではワンポイント学習と称し、各職種の特徴を踏まえた内容で全員が学習講師を務めた。

3つ目は褥瘡予防・管理基準、ニュース発行、医療関連機器圧迫創傷の3つの小集団チームを結成し,目標達成に向けて活動したことである。

これらの結果、褥瘡発生率は介入前1.00%であったが、介入後の2013年度は0.82%、2014年度0.78%、2015年度0.57%と継続的に低下した。

褥瘡回診で多職種参加を強化し、多職種対象の学習会と小集団チーム活動を開始したことにより、職員の褥瘡予防知識の啓蒙、意識の向上が認められ、予防対策の徹底が図られたと考える。褥瘡の発生要因は多岐にわたることから、褥瘡対策は局所の治療だけではなく、圧迫・ずれの予防、スキンケア、栄養管理、リハビリテーションなどの総合的なアプローチが必要であり、多職種の協働とケアが効果的であるとされている。当委員会の活動においても多職種が自立、かつ協力し合い、褥瘡予防の効果をもたらした。

今後の課題としては、集合研修は参加者が限られ内容も一般的である為、各部署の特性に合わせた現場教育は十分とは言えない。各部署の褥瘡委員主体の学習会とWOC共催の出前講座等で現場の実践能力を向上させ、さらなる褥瘡発生率の低下を目指していきたい。