転倒・転落発生率医療安全の領域では常に問題とされる領域です。予防のために過度な身体抑制は人権擁護の立場から強く指弾されます。転倒リスクが高いと判断しながら対策をとらないことも指弾されます。人員に限りがある病棟スタッフでは、どのような予防策がよいのか頭を悩ませているのが現状です。
2018年度の結果の解釈
2016年度の報告数が少ないのは、パソコンからの入力としたことで報告の手数がかかるようになったためと分析しています。その前の2013年から15年までの3年間の平均は4.1‰(493件)の報告です。報告方法を改めてからの2017年は3.3‰(396件)および2018年3.0‰(358件)と以前のレベルには復帰していないことが分かります。入院患者に占める高齢者の数は増え続けています。転倒しやすい患者が増えているが予防が功を奏しているのか、報告に至っていない転倒・転落があるのか、のいずれかが理由と考えられます。
治療を必要とする転倒・転落件数は0.35‰と2017年の0.24‰より増えています。過去最多の発生数となっています。外傷のない軽度の転倒に比べて治療を必要とする転倒・転落の報告もれの割合は少ないと考えられます。従って、実際に治療を必要とする転倒・転落件数が増えていると推測します。
これらのことから、(1)軽症の転倒・転落は減らせているが治療の必要な転倒・転落が増えてしまったのか、(2)転倒・転落の報告が不十分かつ治療の必要な転倒・転落が増えているのか、のいずれかの可能性を考える必要があります。
前述の(1)の場合にはなぜ重症な転倒が増えたかの探求が必要ですし、(2)の場合には転倒・転落の報告のあり方の見直し、かつて定めた手順の遵守などがおろそかにされてマンネリズムに陥っていないかどうかなど振り返る必要があります。当院の転倒・転落対策をあらためて見直す時期に来ていると考えます。
各指標の計算式と 分母・分子の項目名 |
解釈 | |
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備考 | ‰ (パーミル、千分率)表示 | |
分子 |
A)入院患者の転倒・転落件数 B)治療を必要とする転倒・転落件数 |
|
分母 | 入院患者延数(24時在院患者+退院患者数の合計) | - |
(全日本民医連 2011年60施設、 2012年70施設、 2013年83施設参加、2014年74施設、2015年82施設、2016年76施設参加、2017年81施設参加、2018年81施設参加)
A.入院患者の転倒・転落発生率
年度 | 最大値 | 中央値 | 最小値 |
---|---|---|---|
2011年 | 9.7‰ | 4.3‰ | 0.5‰ |
2012年 | 21.4‰ | 4.5‰ | 0.8‰ |
2013年 | 9.2‰ | 4.3‰ | 1.2‰ |
2014年 | 9.7‰ | 4.3‰ | 1.4‰ |
2015年 | 9.9‰ | 4.3‰ | 1.5‰ |
2016年 | 7.8‰ | 4.4‰ | 1.7‰ |
2017年 | 8.2‰ | 4.5‰ | 1.2‰ |
2018年 | 7.8‰ | 4.5‰ | 1.9‰ |
B.治療を必要とする転倒・転落発生率
年度 | 最大値 | 中央値 | 最小値 |
---|---|---|---|
2011年 | 0.8‰ | 0.2‰ | 0.0‰ |
2012年 | 1.3‰ | 0.3‰ | 0.0‰ |
2013年 | 1.2‰ | 0.2‰ | 0.0‰ |
2014年 | 1.1‰ | 0.3‰ | 0.0‰ |
2015年 | 1.7‰ | 0.3‰ | 0.0‰ |
2016年 | 0.8‰ | 0.3‰ | 0.0‰ |
2017年 | 0.8‰ | 0.3‰ | 0.0‰ |
2018年 | 0.9‰ | 0.4‰ | 0.0‰ |