本年度の第39回民医連呼吸器疾患研究会を宮城で開催させていただくことになりました。
2011年3月の東日本大震災から早いもので3年が過ぎました。宮城県内の復旧状況に関しては地域差が大きいですが、少なくとも仙台近辺に関してはだいぶ落ち着きを取り戻しています。
今回の研究会のテーマは「次世代に向けた呼吸器診療~震災での経験を生かして」です。どんなに厳しい震災に遭遇したとしても、それが個人の記憶や仲間内での苦労話に留まる限りは時間とともに風化していきます。震災の経験を次に繋げるということは、言い換えれば日本の、あるいは世界のどこかで次におこる大震災の現場において今回の震災から得られた教訓が有効に活用される、ということです。そのためには「被災地では実際には何が起こったのか」、「現場の対応としてはなにが成功してなにが失敗したのか」といった点を科学的に分析して客観的な情報として広く発信することが必要になってきます。
これは本来震災に限った話ではありません。臨床医学は他の自然科学領域と比較すると実学的な要素が強く、実際の患者さんへの対応中に生じた疑問点や問題点がまず契機となって、続いて目の前の事象を説明するための理論や解決法が模索され見いだされる、といった作業の繰り返しにより成立し、日々アップデートされています。すなわち現代医療はこれまで先輩たちが臨床の現場で見いだしてがんばって報告してきたことの積み重ねにより成立し、今後も進歩していくわけです。
したがってわたしたち医療従事者は(たとえ勤務実態はほとんどサービス業であろうとも)科学者としての視点をも維持しながら日常業務に取り組み、そこから得られた情報をきちんと整理して次世代に伝えていく姿勢が要求される、ということになります。若い参加者の方々には今回の研究会をそのような学術研究活動の第一歩として活用していただければ、と思います。