産業医学センター

仙台市青葉区上杉3-2-28 アクス上杉3F

禁煙 再録(外来事例の紹介、調査事例より)

外来事例、調査事例から禁煙に関わる情報を公開します。

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  • 禁煙と職場改善で頭痛解消

    今年も5月31日の「国際禁煙デー」が終了しました。宮城でも、前日の30日(土)に、第4回宮城禁煙フォーラムが、禁煙医師・歯科医師連盟宮城支部主催で開催され200名が参加しました。職場での禁煙・分煙の通達が労働省から出され、産業保健分野の重要名な課題の一つになって来ています。

    さて、私共の外来に、「頭痛」を主訴で来診する方は、結構おりますが、既に、御紹介しています「問診票によって、「タバコ」の他,「夜勤」「環境状況」に眼を向けて検討することが、日常的に行われています。今まで、かなりの長期間の頭痛・頭重が、禁煙によって解消した方々が、約10名程おられます。特徴的なことは、タバコだけでなく、「夜勤」や「換気不良」といったものの「複合要因」のある方が、ひどく、又、双方を改善すると効果も著明だということです。

    代表事例は、32歳の男子で、主訴は、まさに「頭痛・頭重」です。いわゆる「夜間無呼吸症候」は、認められませんでしたが、顔色も良くなく、元気がありませんでした。職業は、調理師で、タバコは、1日30本でした。職場を見てみますと、町ビルの中にあるごく小さな料理店・飲み屋さんで、「焼き魚」や「焼き鳥」を小さな調理コーナーで、ごく小さなフードの下で仕事をしていました。本人も吸いますが、カウンターの前等のお客さんのタバコも相当吸わされる状況下にありました。

    特に、脳神経系の検査には異常は無く、炎症反応も陰性、肺機能では、軽い末梢気道障害とやはり軽い低酸素血症がある程度でした。ここで、重要なのは、動脈血中の一酸化炭酸ガス(COHb)が、8%近くあり、その為、酸素飽和度は、約87%台、もう立派な呼吸不全、在宅酸素療法患者=低肺機能患者に匹敵していました。呼気ガス分析のCO濃度も同様の値でした

    この方の頭痛は、「禁煙」「職場の換気扇の大型化」そして、お客様への「タバコ少々御遠慮を」の張り紙の結果、血中のCO濃度も呼気CO濃度も改善し、それと共に、頭痛・頭重も消え、長年の鎮痛剤も全く不要になりました。とても本人から感謝された事例でした。

    「タバコ」+「職場環境」が、原因という「頭痛・頭重」では、かなりひどいCO濃度の事があり、それとして「酸素飽和度」「COHb濃度又は、呼気CO濃度」を測定しないと分かりませんので、是非、その検査もされ、「禁煙」+「職場改善」を「治療手段」として展開して欲しいと思います。

  • 高い医療従事者の喫煙率、夜勤、残業が大きく影響

    • 仙台錦町診療所・産業医学センターと同じ財団法人(宮城厚生協会)に属すN病院(ベット160)で、職員254名を対象に「喫煙と健康に関するアンケ-ト」(厚生省研究班による喫煙アンケ-ト、健康と喫煙に関するアンケ-ト、喫煙心理アンケ-トをもとに作成)を取り、同病院禁煙外来の横山成紀医師、伊藤裕子保健婦他健康管理室のスタッフと検討した。
    • 調査期間は、1998年6月、回収率は、約84%。(看護婦84%、技術90%、事務87%、医師48%)
    • 喫煙状況 全体では、30%。男50%で、日本全体よりやや少なめであったが、女の方は、24%と数%高かった。20~30代では、男60%、女31%と男女共やはり全国値を上回っていた。
    • 周囲の喫煙状況との関係 周囲に喫煙者いる人の喫煙率35%、いないもの6%と有意の差あり(p<0.001 )
    • 過去の禁煙教育との関係 受けた人が、16%のみ。受けた人の18%、受けない人の30%が喫煙しているが、有意の差はなし。
    • 労働条件(夜勤・残業)との関係 夜勤者の喫煙率36%、そうでない人のは22%(p<0.05)、月残業時間20時間超エル人の喫煙率は55%、越えない人の26%(p<0.01)と共に有意高い結果であった。
    • 喫煙の知識、健康感との関係 喫煙の有害性についての知識水準は、喫煙群、非喫煙群間の差は無い。一方、健康でありたいという群では、そうとも思わない群より喫煙率は低い傾向にあった。
    • 結論
      • *健康を進める医療従事者の喫煙率が日本全体のよりも高い。
      • *禁煙教育が不十分である。
      • *夜勤や残業が、喫煙習慣に大きく影響
      • *知識と共に健康感が重要

ある生協職員広報誌禁煙シリーズ

  • NO1-誌上禁煙宣言

    • T:この企画で、座談会が数回目ですが、複数の方をお招きするのは初めてです。総務、厚生のKさんと商品企画部のHさんどうも。(2人:どうも)もう一つ初めてのことがあります。この誌上座談会でお二人から重大決意、重大発表があるそうです。さて、先日、仙台で、禁煙医師連盟の総会がありましたが、それにちなんで、今日ののテ-マは「禁煙」です。まず、お二人の方の喫煙のきっかけを教えて下さい。
    • K:高校の時、友人の家で真似してですか。吸うのは、そこだけ。スリルを楽しんでいました。喫煙習慣は、大学でです。
    • Hさん(以下日):新潟で、青年団活動で、先輩の多くが吸っていて、やはり真似からですかね。
    • T:若い時に、まわりの影響から、が共通してますね。Yさん。職員全体の喫煙状況はどうでしょうか。
    • Y:とても高率で大変です。例えば、97年度の健診の問診では、男性69%、女性の正規32%、パ-ト22%と、その年の全国平均の男55%、女14%に比して、かなり上回っています。男女共20代が極めて高率です。ヘビ-スモカ-も喫煙者の男28%、女11%を占めています。
    • T:前に調査しましたら、95年と97年の健診の問診では、その2年間に禁煙した人は、僅か32人なんですね。放置出来ない状況ですね。そう言えば、健保ニュ-スの最新号に「職場の喫煙対策」が特集されていましたが、その概要をYさん、紹介して下さい。
    • Y:日本は世界有数タバコに寛容なこと。分煙も遅れていて、地域生協は、71%、医療生協は58%だそうです。小さい事業所程低いと書いてあります。受動喫煙、つまり吸わされる方の被害をもっと取り上げようと言ってます。確かに、保健指導で店を回ってみて、喘息の方が作業室での同僚の方のタバコで苦しむ、という苦情を聞きましたね。
    • T:さて、相当形成が悪くなりましたが、お二人が、今回、誌上禁煙宣言をするに至った理由を教えて下さい。まず、Kさんは。
    • K:喫煙は、起床時から寝る迄もう、習慣化されてます。自分では、止める気持ちは全くありませんでした。妻、娘に加えて、最近、息子に迄言われては、もう止めるしかないかなと思った訳です。一人では、寂しいので、誰か他の人も付き合ってくれたら、と考えました。
    • H:私は、家では元々吸いませんし、花粉症の季節は辛くて減らします。禁煙が続かないのには、太るというのもありますね。今回は、Kさんの応援団でしょうかね。
    • T:禁煙ガムは、錦町診療所でも扱っていますし、肥満予防の面では、Yさんにも協力して貰いましょう。ところで、そこで、取材に徹するとニコニコしているMさん。タバコが吸ってはダメな病気をお持ちのようですが、一緒に禁煙始めませんか。
    • K&H:そうだ、そうだ。
    • M:絶対嫌だけど、企画協力者のお願いなので、分かりました。お二人が、5月5日迄、禁煙したら、合流しましょう。

    (M:この企画を御覧になって、禁煙を決意された方、禁煙出来た方、編集部に御連絡下さい。掲載していきますよ)

  • NO2-喫煙と禁煙Q&A その1

    • 前回は、誌上禁煙宣言の企画でしたが、今回から2回に分けて「喫煙と禁煙の知識」についてQ&Aの形で進めたいと思います。Yさんに保健指導等で得られた疑問・質問等を順に出して貰います。
    • 喫煙で肺癌が増えることは皆さん御存知ですが、他にどんなのがありますか。
    • 「タバコ病」と称されているくらい全身にその害は及んでいます。いくつか代表例を挙げます。脳卒中や心筋梗塞が増えます。動脈硬化が進みますので老化が促進されます。皆さん気に掛けてる[ボケ」にもなりやすいですね。肺疾患では、気管支喘息はもちろんですが、肺の破壊が進む肺気腫や慢性気管支炎を始め、症状の出ない末梢気管支の障害も知らないうちに進行します。悪性疾患では、あらゆる癌が増えますが、白血病等も増やします。今、最も注目されているエイズの感染もそして発病にも誘導するそうです。
    • 他に変わったものはありませんか。
    • そうですね。睡眠障害がタバコが原因だった例もありますよ。
    • タバコは、本人と共にまわりの人にも有害ですね。「受動喫煙」というのですか。
    • タバコの煙では、肺に入るもの(主流煙)より吸わない時の煙(副流煙)が、むしろ有害です。だから、吸わされる人の害も重大です。喫煙する人の妻の肺癌も喫煙量に比例して増えます。まわりの人の心臓病も増えますね。アメリカでは、1年間に3万件の心臓発作があるとの報告があります。乳幼児が急に原因不明で亡くなることが問題になっていますが、家族のタバコの煙が最大の犯人と疑われるようになっています。両親が喫煙している子供の喘息で、両方共禁煙してくれた群は、両親共喫煙を継続した群の10倍も多く治ったという報告がアメリカから出されています。
    • 若い人の喫煙が目立ちますが、心配ですよね。医学的にはどうですか。
    • 若い時から吸いますと、影響はより大きいですね。外国で子供の頃から吸っていて、20代後半には、白髪としわでまるでお年寄りのようになった例さえあります。癌の発症をみますと、喫煙開始年齢が若い程多いという結果です。妊娠関連では、流産も奇形も増やします。1日の本数の数にあたる%だけ精子の異常が出る、という研究結果もあるのです。(図参照)これから結婚する方、赤ちゃんを欲しい、という方は早急に禁煙して欲しいですね。
  • NO2-喫煙と禁煙Q&A その2

    • 今月号は、前号に引き続いて「喫煙と禁煙」の2回目です。その後、入手した資料ですが、今、みやぎ生協で問題となっています「腰痛症」が、喫煙で増えたり、悪化したりしているという報告です。少なくとも3つの調査報告がありました。
    • どうしても、「腰」にだけ眼がいきますが、そうした点でも、禁煙して貰って楽になって欲しいですね。喫煙の害についての話が続きましたが、次に、禁煙するとどういう効果があるかについて教えて下さい。
    • まず、肺癌を先頭にした「悪性腫瘍」ですが、喫煙開始年齢や累積の喫煙本数にもよりますが、禁煙しておよそ5年位で、その有害性がほぼ無くなるといわれています。
    • 仙台錦町診療所での具体的な事例を、ホ-ムペ-ジに出してますよね。
    • はい、禁煙したところ長らく悩んだ頭痛が無くなった例ですね。受診された時は、ひどい頭痛でしたが、顔色も悪く、精気も無い感じでした。
    • 診断はどうしたのですか。
    • 呼気中と血中の一酸化炭酸ガスの結合するヘモグロビン(COHb)が随分高かった訳です。Hbは、酸素を運ぶ役目があるのですが、COで邪魔され、組織に酸素が届きません。脳では、頭痛と自覚するのです。頭痛薬を多用していましたが、禁煙後はHbCOもそして頭痛も消えました。他にも結構いました。
    • 他にはどういう例がありますか。
    • 喘息が軽快したという例は多数あります。肺全体にあった影が(好酸球性肉芽腫)跡形もなく消えたという報告もあります。
    • タバコは「ストレス解消」にもってこい、といって止めない方が多いんですけど。
    • 確かに、夜勤労働者での喫煙率が高い、という成績が多いですから、喫煙の背景にストレスの関与はありえます。でも、そうすると、「ストレス」と「喫煙」の相乗作用が心配ですよね。吸い始めの理由は、「カッコ良い」「人の真似」が圧倒的に多く、喫煙者の吸い方も見てますと大抵は無意識に吸ってますね。必ずしもストレス解消の為とは見えません。医学的には、血中濃度が下りかけると吸いたくなる「ストレス」なんです。
    • どうしたら上手に止められますか。
    • うまく止めれない方は、まず、「ニコチン中毒」患者であることをしっかり認識することです。先に紹介した「害」をきちん頭に入れ、自分の健康にはもちろん、家族や同僚への迷惑を考えて禁煙を決意することです。それと、自分が吸っている為にそれを見て吸い始めたり吸い続けたりする若い人がいることも知って欲しいと思います。
    • 最近は、医療上の補助材もありますね。
    • ニコチンガム、パッチ(貼り薬)が、わが国でも使えます。仙台錦町診療所でも取り扱っています。

その他の情報

  • 最近5年程の喫煙・禁煙の文献・記事の傾向

    1. 喫煙の害 
      1. 喫煙による肺癌は女性が男性の1.5倍
      2. 喫煙で乳癌の肺転移りすく上昇
      3. 妊娠中喫煙は、中枢神経系奇形増す。本数依存
      4. HIV感染とAIDS発症の重大危険因子
      5. ヘビ-スモ-カ-(BI400以上)は、肺機能異常、末梢気道障害6)肺気腫に関与
      6. 肺のNK細胞活性が傷害される
      7. 喫煙者の肺に黄色色素
      8. 虚血性心疾患のリスク(久山町)
      9. 冠動脈バイパス手術の長期合併症増加
      10. 脳卒中の危険因子
      11. 喫煙者のCOPDに変異遺伝子が関与
      12. 喫煙者で高い脊椎対対固定術の失敗率
      13. 女性の骨損失に関与
      14. 流産率が高い
      15. 白血病リスクに関与
      16. 睡眠障害
      17. >喫煙DMは合併症多い
      18. >高齢喫煙者の運動能力5才減
      19. >老化促進
      20. >動脈硬化促進
      21. >再喫煙は肺機能急速低下
    2. 受動喫煙
      1. 米で年間3万件の心臓発作
      2. 胎児酸欠
      3. ペルテス病(小児大腿骨骨頭軟骨症)
      4. 呼吸器異常2倍
    3. 禁煙効果
      1. 子宮頸異形成縮小
      2. 寛解した好酸球性肉芽腫症
    4. 禁煙指導
      1. ニコチン鼻用スプレ-(スウェデン)効果あり、鼻炎様副作用
      2. ニコチン療法は全般に効果
      3. ニコチンガム(効果報告多数)
      4. カウンセリング
      5. ニコチンパッチ
      6. ニコチントロ-チ
      7. 禁煙外来
      8. 禁煙指導書

    (注)以上は、既に紹介した、喫煙・禁煙のシリ-ズ用にまとめたもので、全てを網羅したものではありません。

  • 世界禁煙デー第7回宮城フォーラム概要

    5月27日「禁煙の方法を広めよう」  仙台福祉プラザ

    午前 学校医、養護教諭の禁煙指導の実際(主担当仙台市)
    小林賢二氏(元群馬県立高崎工業高校)
    「なぜ、どうしてを考える禁煙指導」
    午後 (禁煙医師・歯科医師連盟宮城支部主担当)(進行:広瀬俊雄)
    基調講演「たばこを吸えばどうしてガンになるの」
    JR仙台病院佐藤研先生
    座長:中井裕之医師
    体験発表 タバコの魔の手から逃れて  川村秋夫歯科医師
    肺癌手術患者
    学校医の活動紹介 大滝正通医師、高橋克子医師、山本蒔子医師
    総合討論 司会:奥田淳二医師