残余検体の二次利用について

医療に関わる者は、常により良い医療を目指しています。坂総合病院(以下「当院」)一同も同じ思いでおり、診療の際に、未来の医療を支えるべく医師ならびに医療従事者の教育や医学の進歩を目指しています。すなわち、診療、教育、研究を担う、地域の中核病院として疾病状況を把握し、啓蒙・研究の役割も担っていきます。

医療機関においては一般的に、患者さんの診療のために採取させていただいた検体のうち、残った検体(血液や尿、痰、皮膚組織など、以下「残余検体」と述べます)が生じた場合にはそのうちの一部を検査の精度管理、診断の精度向上などを目的として適宜利用させていただいています。

当院においては、診療水準の向上や医学、医療の進歩を目指して、具体的には以下のような用途で利用させていただいています。

  • 医療水準の向上(より正確な診断・治療方針の決定など)
  • 将来の医学の進歩につながる研究(未来の同じ病気の患者さんの診断・治療につながる)
  • 検体検査の精度管理(測定検査が正しいものとなるようなメンテナンスや測定方法の研鑽)
  • 流行感染などの疫学的解析(いち早く把握することで早期対応ができる)
  • 現在から過去に遡ってデータを収集・分析する「後ろ向き研究」
  • 現在から未来に向かって追跡・観察した結果を分析する「前向き研究」

この残余検体の利用については「臨床検査を終了した検体の業務、教育、研究のための使用について-日本臨床検査医学会の見解-」、「病理検体の目的外使用に関する提言-日本病理学会」、「臨床研究に関する倫理指針(平成20年)」、「疫学研究に関する倫理指針(平成19年)」、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成16年)」、「個人情報保護法」を遵守し行っております。

残余検体の研究への利用

当院では、残余検体を研究に利用させていただく場合、原則として検体の提供者である患者さんに研究への利用の同意を取得することになっていますが、研究対象となるすべての患者さんから同意を取得することが不可能と判断された場合、

  1. その判断が妥当であること
  2. その研究が公衆衛生の向上のために特に必要であること
  3. 研究対象となる患者さんがご自身の残余検体の研究利用を拒否できるように研究内容を 公開すること(これを「オプトアウト」といいます)

これらを前提として、当院の倫理委員会の審査において承認、病院長の許可が得られた場合、患者さんからの同意を取得せず残余検体を研究に利用させていただいています。

なお、残余検体を利用する研究では、患者さんに費用負担はなく、健康被害が生じる可能性も ありません。これらの研究は、「ヘルシンキ宣言」の原則に基づき、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」等の国が定める関連法令・通知に従い実施されます。

研究で利用する残余検体に係わる個人情報の保護

残余検体を研究目的で用いさせてもらう場合であっても患者さんの個人情報は厳重に保護されます。その際に、個人情報は守る目的で患者さんを特定できる情報(お名前やカルテ番号など)を削除し、符号化した番号を付与します。これを「匿名化」と呼びます。

研究目的で使用する場合、以下のようなケースが想定されますが原則匿名化した情報を利用します。

  1. 外部機関に測定等を委託する場合
  2. 電子メールやインターネットを通じて、又は郵送やFAX等により共同で研究を実施している他の施設へ提供する場合
  3. 研究成果を学会や学術雑誌などで発表する場合

特別な理由があり匿名化ができない場合は、患者さん一人ひとりへ個別に説明をさせていただき、利用に関する同意を取得したのちに情報を利用させていただきます。

患者の権利

患者さんには、これらの残余検体を医学教育・研究等に利用して欲しくない場合は、それらを拒否する権利が保障されています。その際はお手数ですが担当医師までお申し出ください。拒否することにより患者さんにとって不都合な扱いを受けることはありませんのでご安心ください。

また、いったん同意を取得した後であっても、いつでも同意を撤回することができます(ただし、申出をいただいた際に研究・集計がすでに終了しているなどご希望に添えない場合がございます。)。

お問い合わせ

この件に関するご質問は、担当医師までお尋ねください(お申し出がないものについては、上記の内容に従い残余検体を取り扱わせていただきます。)。

電話:022-365-5175(代表)

公益財団法人宮城厚生協会 坂総合病院 病院長