日帰り(短期入院)手術とは
「日帰り手術」とは文字通り、病院へ朝に来院し、午前中に手術を受けた後夕方に帰宅して頂くことです。 しかし我が国では、手術当日に一泊して翌日に退院する、 いわゆる「短期入院手術」も広義の日帰り手術として行われていることが多いようです。 当院外科でもヘルニアの手術では、以下のような二つの短期入院手術を設定して、いずれかを患者さまに選択していただいています。
狭義の日帰り手術
手術当日の朝に来院して午前中に手術を行い、手術当日の夕方に帰宅します。
短期入院手術
手術当日の朝に来院して午前中に手術を行い、手術翌日の午前中に帰宅します(一泊入院)。
当院では、当面鼠径ヘルニアの手術を日帰り手術(短期入院手術)の対象とし、 状況を見て漸次手術侵襲の小さい他の手術にも適応を広げていきたいと考えています。 しかしすべての患者さまがこれらの短期入院手術を受けられるわけではなく、 下記のような前提条件が必要ですので、詳しくは診察の結果決定されます。
- ご自宅が比較的病院に近く、退院されたあと万一異常(実際にはほとんどありません)があればすぐ受診できること
- 一人住まいの方でないこと
- 日常生活の活動度が低下していないこと
- 他に重症な病気をお持ちでないこと
上記の条件が満たされない患者さまの場合には、個々の患者さまの病態や事情に合わせて入院期間を調整していくことになります。
手術当日、または翌日に退院することにより、入院による時間的拘束が大幅に短縮できるだけでなく、 術前と同じ環境下で日常生活が継続できるため、結果として早期の社会復帰が可能になることが期待されます。 また、子供の世話や家事、仕事の調整など精神的、肉体的負担が軽減し、 入院期間が短いことにより入院医療費が安く済む、という効用もあります。
一方、社会的医療の観点からは、入院期間が短くなることにより、 入院ベッドや手術室などの有限の医療資源がより多くの患者さまに提供できるようになります。
しかし我が国では米国などと違って、早期の退院後病院と自宅を仲介してくれるような第三の施設がなく、 また短期入院手術の歴史も浅いため、現時点ではすべての手術を短期入院手術の対象とすることは困難です。 このような背景の中で、鼠径ヘルニア手術は以下の理由で、短期入院手術の最も良い適応と考えられます。
- 内臓を操作する手術ではないこと
- 手術時間も短く侵襲も比較的小さいこと
- 術後改めて何らかの治療を行う必要がないこと
- 術後早期に経口摂取、トイレ、歩行などが可能になること
- 術後の創部の痛みは、体動時を中心に数日あるものの、これへの対応は一般的には通常の鎮痛剤の内服や坐薬で対処でき、入院治療でも自宅療養でも対応に差がないこと
当科にてヘルニア手術を日帰り手術や短期入院手術で行われる場合の診療経過の流れは、
診療ワークフロー図を御覧ください。 詳しくは、平日の午後に外科外来までお問い合わせください。 社会復帰について一概には言えませんが、日常生活(散歩、軽い運動、庭いじり)や机に座ってする事務作業などは患者さまの判断でいつから再開しても構いません。 個人差はありますが、術後3週間を過ぎれば、ゴルフなどそれ程激しくない運動であれば再開することが出来ます。 詳しいことは主治医にご相談ください。