2022年度

2022年度(令和4年度)宮城厚生協会 事業計画

2022年4月~2023年3月

はじめに

高齢化や人口減少が進み、地域・家庭・職場という人々の生活において、社会の経済状況が大きく変化し支え合う基盤が弱まっています。誰もが生活の安心を得るためには、社会保障制度の充実として、国や地方自治体がそれぞれの分野で、病気・障害、出産、老化、失業など、生活上の諸問題に広く対応されることが望まれます。

当法人は設立から72年が経過します。経営構造転換5ヶ年に続くあらたな長期計画にも、これまでの「無差別・平等」の考え方を浸透させる思いを込めています。わたしたちがどの方向に進むのか、患者・利用者に対して、その行為や選択が理念に沿ったものであるのか日々意識し事業を進めます。

いのちと暮しを守ることに力を尽くし、地域住民の健康と健やかな生活を支える事業体として、日本国憲法が定める平和・人権・民主主義の原則と国民の生存権と文化的生活の向上のため公的法人として役割を果たしていきます。

宮城厚生協会の理念

公正な医療と介護・福祉を提供し、安心して暮らせる地域づくりに貢献します

Ⅰ. 事業経営をめぐる環境認識

新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルスの感染拡大は、医療提供体制の脆弱性と課題を浮き彫りにしました。急激な感染拡大は第6波まで繰り返され、保健所機能は対応しきれない状況に陥り、医療機関や介護施設で働く職員は心身ともに疲弊しながらも役割を果たしています。

感染が繰り返される中で、感染拡大への対応として全国の都道府県でコロナ病床が確保され、急性期(重症)を受け入れる医療機関と回復期(軽症)を受け入れる医療機関との連携が進んでいます。

オミクロン株の感染拡大では、陽性者の入院と濃厚接触者の宿泊施設での待機措置は、重症度に応じて自宅療養も選択肢となっています。オミクロン株の臨床データが明らかになる中で、ワクチン接種、感染予防、検査、早期治療の枠組みで社会生活が維持されています。ワクチン接種は三回目が前倒しで進められ、重症化予防として中和抗体薬も使われ始めています。これまでの教訓を活かし、新型コロナウイルス感染症への対応とともに事業を続けることになります。

2022年度診療報酬の改定

医療機関や薬局の収入に当たる診療報酬は、医師や看護師等の人件費にあたる本体部分は引き上げられましたが、薬代にあたる医薬品価格と医療材料価格は引き下げられたため全体としては連続してのマイナス改定です。良質な医療を効率的に提供する体制の整備として、看護配置7対1の入院基本料を含む入院医療の適正化、DPC制度の算定方法の見直し、医師の働き方改革に係る実効的な仕組みづくり、外来医療機能分化と連携、かかりつけ医機能の整備、後発医薬品の調剤体制など、改定に応じた施設基準と事業運営に変えなければなりません。

社会保障費と経営への影響

2022年度の国家予算では社会保障費が過去最大になる中で、年金は物価や賃金に連動し引き下げられ、一定の所得がある75歳以上の医療費窓口負担は2割に引き上げられます。コロナ禍で社会活動が停滞する中で、経済的要因による受診抑制が懸念されます。

新型コロナウイルスの感染拡大で多くの方が職を失っています。失業手当が支給されたことにより雇用保険積立金は大幅に減少したため、今年度の保険料率は段階的に引き上げられます。現在の状況が続けば、失業手当や教育訓練に必要な財源はマイナスになることが予測されており、更なる保険料率の引き上げに備えなければなりません。

公的医療機関の再編統合

地域医療計画では、急性期病床の偏在と高齢化で需要が増す回復期や慢性期の不足予測から、病症機能の転換を進めるとしています。県内に於いては、公立刈田総合病院はみやぎ県南中核病院との連携プランに沿って13診療科に縮小され、結核・感染病床は県南中核病院に移されています。また、仙台圏での4病院の再編統合案が公表されています。縮小や移転する医療機関の地域住民からは不安の声が寄せられていますが、公的医療機関と民間医療機関との連携、医療圏ごとの医療機能と役割を考慮した病床転換が迫られることになります。

新たな脅威への備え

世界各地で重要インフラに対するサイバー攻撃が問題となっていましたが、電子カルテやクラウドサービス等の普及に伴い医療機関も攻撃対象となっています。国内におけるランサムウェアで診療記録などの重要データや医療機器を扱う基幹システムが止まるという被害は、2021年上半期の統計では前年の3倍となっています。全てのシステムにはセキュリティ上のリスクが常に存在することを意識しなければなりません。事業継続にはIT化は避けられませんが、サイバー攻撃の手法は多様化・巧妙化しており、システムの最新化やセキュリティの強化など、システム整備とリスク管理に関わる負担は年々増しています。

Ⅱ. 2021年度事業計画

本公益財団は、公益認定法人として、公益事業の推進と経営の透明性、健全性を確保し、社会的役割の発揮に全力を尽くします。

平和憲法の理念を高く掲げ、すべての人が等しく尊重される社会をめざし、これまでの歩みをさらに発展させ、人権が大切にされるよりよい社会を目指します。地域住民とともに力を合わせ、より広範な連帯で貧困と格差・超高齢社会に真正面から向き合い、日常の医療・介護の実践、権利としての社会保障の向上を目指し事業活動を進めます。2021年に策定した「中長期計画(2021~2025年)」に基づき、泉病院の建て替えに着手します。

  1. 患者の立場にたつ診療事業、無料低額診療事業
    • 地域医療支援病院の坂総合病院は、入院を中心とした救急・専門医療を充実させ、6疾患5事業に取り組みます。地域の医療機関や介護施設等との連携を重視します。
    • 各病院・診療所は、地域での医療・介護の連携を大事にし、規模や地域の医療環境などによって異なる外来機能と入院機能、及び介護事業で地域から求められる役割を担います。
    • 新型コロナウイルス感染症への対応に取り組みます。
    • 高齢者入居施設「はなみずき」は、低所得者や在宅医療を必要とした方でも入居できるホームとして切実な地域需要に応えます。介護医療院は家族による在宅介護が難しい方の療養を支えます。
    • 第二種社会福祉事業として、無料低額診療事業を重視します。
    • 「医療相談」「生活相談」「介護相談」に積極的に取り組みます。
    • 自然災害での医療支援・救援活動に取り組みます。
  2. 保健予防・集団的健康管理事業
    • 「協会けんぽ」健診事業の充実、専門性を生かした特定健診・保健予防活動を重視します。疾病予防事業としての運動療法、労働安全衛生法に基づく産業医活動に取り組みます。
    • 振動病・頚肩腕障害・職業性腰痛、被爆者健診及び被爆二世健診、アスベストによる健康障害やじん肺に関する健康相談等、労働者・住民の健康問題に取り組みます。
  3. 医療従事者の研修教育、医学・看護学等の研究事業
    • 東北大学と東北医科薬科大学との連携による医師・薬剤師養成、みちのく総合診療医学センターでの家庭医・総合診療医養成に取り組み、地域医療を担う医師・薬剤師を育てます。
    • 専門研修のため国内外大学・研究機関への研修派遣を行い、地域医療に貢献します。
    • 救急医療・地域連携などの地域開放型研修会の開催、救急救命士の認定研修、認知症対応能力の向上を目的とした研修会等を実施します。
    • 医師・薬剤師・看護師をはじめとした、医療・介護系学生の研修・実習の受け入れ、育成を行います。
  4. 訪問看護・介護、通所、在宅介護支援事業、障害者の医療・福祉事業
    • 悪性疾患への対応、障害児・重度の乳幼児への訪問、ケアステーションを核とした在宅看取りへの対応など、在宅での療養と介護を支えます。
    • 医療度の高い遷延性意識障害者、重度の障害者の療養を支えます。
    • 24時間定期巡回・随時対応サービスなどの在宅サービス強化やリハビリテーションなど自立支援型サービスの計画的な人材育成を行います。
  5. 地域住民との協力による健康増進事業
    • 地域住民と協力して「健康相談会」「復興公営住宅等での健康相談会」「路上生活者等の健康を守る健診・食事会」等の健康増進に取り組みます。
    • 県内に避難している福島第一原発被曝者等の健診、被災住民の健診や相談会等に取り組みます。
  6. 総合的な社会保障制度確立に関する事業
    • 地域住民の健康権を守るため、社会福祉士などによる医療相談・生活援助に取り組みます。
    • 社会保障制度が活かされるよう、医療・介護現場の気づきを大事にしながら改善援助に取り組みます。