宮城厚生協会は戦後の復興期に設立されてから70年を迎えます。1病院1診療所2医院、1保育園で始まった事業は、4病院、7診療所(歯科・附属含む)、6ケアステーション(訪問看護・介護)と地域包括支援センターを運営する公益財団となり、保健・医療・介護・福祉活動の充実を目指しています。また、東日本大震災や台風などの自然災害での医療支援・救援活動は、設立趣意書に謳う基本理念の継承であり、その役割は益々期待されています。いのちと暮しを守ことに力を尽くし、地域住民の健康と健やかな生活を支え得る事業体として、日本国憲法が定める平和・人権・民主主義の原則と国民の生存権と文化的生活の向上のため役割を果たしていきます。
地域医療構想では、団塊の世代全員が後期高齢者になる2025年を見据えて、病院完結型から地域完結型の医療に改めるとし、入院期間を短縮させるため、病床を高度急性期、急性期、回復期、慢性期に分け、二次医療圏ごとに「必要病床数」が示されています。診療実績評価は、がん、心疾患、脳卒中の三疾病、および二次救急等の7事業となりますが、類似機能を持つ二つの病院が近接していれば競争にさらされ、基準を満たせなければ補完的な機能を担うこととなります。厚生労働省は「診療実績が特に少ない」あるいは「類似かつ近接」する公立公的病院として424施設を公表しました。いずれ他の医療機関にも及ぶことに備えなければなりません。
2020年度診療報酬改定の基本方針は「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」が重点に位置付けられました。改定率は本体部分で+0.55%となり、これには救急病院における勤務医の働き方改革への特定分野として+0.08%が含まれます。これを除く分野別改定率は医科+0.53%、歯科+0.59%、調剤+0.16%となります。薬価改定率を単純に反映させると全体で-0.46%となり、前回に続き実質マイナス改定で500億円程度の医療費が削減されることとなります。急性期入院医療では、重症度、医療・看護必要度が引き上げられ、回復期入院でもリハビリテーション実績指数が引上げられました。外来医療ではかかりつけ医療機能を評価する要件が見直され、紹介状無しでの選定療養費の徴収が義務付けられる施設要件は200床以上に拡大されました。改定への対応が重要となります。
2019年4月から時間外労働の上限規制が適用され、労働の上限時間を超えた場合罰則が適用されます。長時間労働を放置すれば社会的信用を失うこととなり、場合によっては保険医療機関の指定が取り消されることになります。医師は2024年まで猶予期間が設けられましたが、労働時間を短縮するための緊急的な取り組みを行い、その結果を報告する義務が課せられています。医師の労働時間の適正化に向けた在院時間の把握、タスクシフティングの推進、短時間勤務等の多様な働き方、連続勤務時間の上限やインターバル設定、複数主治医など、労働時間の短縮に向けた取り組みを確実に進めなければなりません。職員の健康を守るとともに、医療の質の担保と安全上の観点からも重要な課題です。また、有給休暇の取得、同一労働同一賃金への対応でも課題を明らかにし整備しなければなりません。
本公益財団は、公益認定法人として、公益事業の推進と経営の透明性、健全性を確保し、社会的役割の発揮に全力を尽くします。
平和憲法の理念を高く掲げ、すべての人が等しく尊重される社会をめざし、これまでの歩みをさらに発展させ、人権が大切にされるよりよい社会を目指していきます。地域住民とともに力を合わせ、より広範な連帯で貧困と格差・超高齢社会に真正面から向き合い、日常の医療・介護の実践、権利としての社会保障の向上を目指し事業活動を進めます。2016年に策定した「経営構造転換5ヶ年計画」は最終年度となります。厳しい経営環境への対応と中長期構想に向けた安定的な経営体への転換を進めます。