本公益財団は、設立趣意書(1950年2月)で謳う「単に疾病の治療または療養だけが対象になるものでなく、疾病によって起こる社会的な疾患を匡正するまでに発展せしめなければならない。こうしてこそこの事業の新しい真の姿が発揮される。即ち広い意味の厚生事業にまで手を延ばさなければならない。またこういう諸活動と諸施設を一般大衆の福祉の増進という目標のもとに統一されれば医療事業もはじめて完成の域に達することと信ずる」を基本理念としています。
宮城厚生協会の諸事業が、地域医療と介護、福祉の充実に寄与し、地域住民の健康と健やかな生活を支え得ることを願い、日本国憲法が定める平和・人権・民主主義の原則と、国民の生存権と文化的生活の実現のために努力するものです。
2019年度の通常国会では医療保険関連法案が審議されます。同時に、医薬品医療機器法改正案、児童福祉法改正案、障害者雇用促進法改正案、女性活躍推進・ハラスメント防止対策法案などが審議されます。特に、健康保険法、国民健康保険法、高齢者医療確保法、社会保険診療報酬支払基金法、介護保険法の議論結果によっては大きな影響を及ぼすことから、内容把握と機敏な対応が求められます。 地域には「保険証がない、窓口負担が支払えない」と患者になれない方が増えています。また、自治体とも連携しながら無料低額診療を広げるとともに、更なる社会保障の充実を求めていく必要があります。
労働基準法に盛り込まれた時間外労働と休日労働を合わせた年間上限は960時間が示されています。これは1ヶ月あたり概ね80時間とされる過労死ラインが制定されることになります。多くの産業で長時間労働による健康破壊が進むことが危惧されています。また、雇用では、労働力不足として外国人労働者の受け入れ拡大などが進められます。介護分野でも人材確保が困難な中、介護職も特定技能1として指定されています。受け入れには、日本人と同等の賃金や労働条件の整備、日本語の習得や生活援助など環境整備が課題となります。
厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」では、医療機関の勤務医の時間外労働を年1900時間から2000時間まで可能とする特例が提案されました。これは一般勤労者の2倍にあたり、労働環境の改善にはなりません。2024年から適用される医師の罰則付き残業時間については暫定特例水準が提案されていますが、暫定特例水準が終了する2035年度末に向けた対応と今後を注視しなければなりません。長時間労働の改善には、根本的には医師確保が重要となりますが、医師研修の必須化と専門医制度など、医師養成をめぐる情勢の変化により医師確保は厳しさを増しています。こういった状況のもと、医師の残業時間上限への対応と医師確保を同時に進めなければなりません。また、女性医師の働き方についても支援や見直しが呼びかけられています。
実質賃金や家庭消費の低迷による深刻な消費不況が続いている中、低所得者ほど負担が重くなる消費税率の引き上げは格差と貧困を広げ、国民生活に深刻な影響を及ぼしかねません。中医協は、今年10月予定の消費税率10%への引き上げに伴い、診療報酬本体改定率がプラス0.41%、薬価・材料価格改定率をプラス0.47%とすることを検討しています。一定補てんされることとなりますが、過去の実績では支払い消費税分までの改定とはなっていません。現時点での改定率では、昨年9月の薬価調査に基づく実勢価格改定として薬価・材料価格が0.95%引き下げられていますので、トータルでは診療報酬はマイナスのままとなります。
一連の対応により、厚生協会における2019年度の外来稼働日数は264日となり、前年より3.5日少なくなります。稼働日数の減少は事業収入に大きく影響します。5月連休では、在宅当番医制や休日夜間体制、病院群輪番制実施体制など、通常の5月連休とは異なる対応が求められています。それぞれの地域における医療機関と協力しながら診療体制を整え、かかりつけ患者や住民の受療権が損なわれないようにしなければなりません。
本公益財団は、公益認定法人として、公益事業の推進と経営の透明性、健全性を確保し、社会的役割の発揮に全力を尽くします。
平和憲法の理念を高く掲げ、すべての人が等しく尊重される社会をめざし、これまでの歩みをさらに発展させ、人権が大切にされるよりよい社会を目指していきます。地域住民とともに力を合わせ、より広範な連帯で貧困と格差・超高齢社会に真正面から向き合い、日常の医療・介護の実践、権利としての社会保障の向上を目指し事業活動を進めます。2016年に策定した「経営構造転換5ヶ年計画」は折り返しとなります。厳しい経営環境への対応と中長期構想に向けた安定的な財務構造への転換を目指します。