本公益財団は、設立趣意書(1950年2月)で謳う「単に疾病の治療または療養だけが対象になるものでなく、疾病のよって起こる社会的な疾患を匡正するまでに発展せしめなければならない。こうしてこそこの事業の新しい真の姿が発揮される。即ち広い意味の厚生事業にまで手を延ばさなければならない。またこういう諸活動と諸施設を一般大衆の福祉の増進という目標のもとに統一されれば医療事業もはじめて完成の域に達することと信ずる」を基本視点としている。
宮城厚生協会の諸事業が、地域医療と介護、福祉の充実に寄与し、地域住民の健康と健やかな生活を支え得ることを願い、日本国憲法が定める平和・人権・民主主義の原則と、国民の生存権と文化的生活の実現のために努力するものである。
新自由主義的政策が全世界で進む中、日本においてもかつてない格差社会が形成されてきており、中間層の減少・消滅とともに所得階層の両極化など、2009年以降の「第二の貧困拡大期」が続いている。低所得者層の拡大にともない、生活保護をはじめとする社会的扶助の重要性はますます高まっている。特に、生活困窮高齢者世帯及びその予備軍の世帯は、2030年には500万世帯以上に達すると推計され、低所得者の医療受診抑制を生み出し、経済格差に基づく健康格差はますます拡大することが懸念される。
働き方改革は、今後減少する労働人口を補完する形で様々な働き方が模索されている。多様な働き方による潜在的な労働力を掘り起こすことで社会資本の充実を目指す一方で、副業の推進など、長時間労働を容認する政策など課題もかかえている。
「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」「賃金引き上げと労働生産性向上」「罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」「女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備」「病気の治療と仕事の両立」「子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労」「雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援」「誰にでもチャンスのある教育環境の整備」「高齢者の就業促進」「外国人材の受け入れ」などの柱が掲げられ、多岐にわたる改革が検討されている。特に「罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」の項目には、医師の時間外労働規制の問題が含まれており、法改正から5年後をめどに規制を適用するとされている。
医療・介護の現場では、少ない人員で業務をこなさなければならない状況に加え、特に介護分野では低賃金と高い離職率が常態化している。医療の全般的な高度化、医療機器の取り扱いの複雑化、患者・家族からの様々な要求の高まりなど、医療・介護の現場では、避けることのできないストレスにさらされている。
2018年度からの新専門医制度が開始される。専攻医の一次登録では地域偏在が顕著であり都市部への集中がみられる。内科と外科登録数が減少し、眼科、耳鼻科、泌尿器科などが増加している。偏在により外科や小児科、産婦人科の専攻医が一桁台の県もあり、極めて少なくなった県や地域は医療システムの継続さえも危ぶまれる。
高齢化による社会保障費の自然増を上回る削減方針により全体でマイナス1.19%となる。診療報酬改定率が本体プラス0.55%となったが体制や成果が重視され、重症度・医療看護必要度、地域連携評価、在宅復帰率の評価基準が厳しくなる。介護報酬はプラス0.54%、障害福祉がプラス0.47%、薬価はマイナス1.74%となる。
高額療養費制度負担上限額の引き上げ、介護保険の利用者負担増や保険料引き上げなどにより、今まで以上に受診・利用控えに拍車がかかることが予想される。また、国民健康保険の財政連営が都道府県単位に移行する影響も懸念される。
本公益財団は、公益認定法人として、公益事業の推進と経営の透明性、健全性を確保し、社会的役割の発揮に全力を尽くす。東日本大震災発生から7年、被災者・被災地が抱える問題はますます複雑化・深刻化している。社会的風化が表れつつある中、長期的視点で支援活動を行う。「保険医療2035年」も視野に「2025年医療・介護改革」への本格的な対応を進め、保健・医療・介護事業を一体のものとして、環境変化に対応した中長期事業計画を策定する。
5ヶ年計画のもと、理事会機能強化をはじめとする組織変革、新しい人事賃金制度をすすめ、職員教育・研修システムを充実させ、全職員が参画する事業運営に努める。