本財団は、設立趣意書(1950年2月)で謳う「単に疾病の治療または療養だけが対象になるものでなく、疾病のよって起こる社会的な疾患を匡正するまでに発展せしめなければならない。こうしてこそこの事業の新しい真の姿が発揮される。即ち広い意味の厚生事業にまで手を延ばさなければならない。またこういう諸活動と諸施設を一般大衆の福祉の増進という目標のもとに統一されれば医療事業もはじめて完成の域に達することと信ずる」を基本視点としている。
宮城厚生協会の諸事業が、地域医療と介護、福祉の充実に寄与し、地域住民の健康と健やかな生活を支え得ることを願い、日本国憲法が定める平和・人権・民主主義の原則と、国民の生存権と文化的生活の実現のために努力するものである。
東日本大震災からの6年、被災者に対する医療費一部負担金ならびに介護保険利用者負担減免措置は、国の特別調整交付金による追加財政支援で継続されてきた。2016年以降は9自治体のみとなり、対象は限定され後期高齢者医療は全県で終了している。居住地や保険により対象から外れている被災者の受診抑制が懸念される。
社会保険料負担の増加や、若年層を中心とした将来不安が強まり、家計消費支出は2014年から連続して低下している。非正規労動者の割合が伸び、働いている人や子どもの貧困率が高まっている。2017年度に支給される年金額は0.1%引き下げられる見通しである。
仙台市が実施した「子どもの生活に関する実態調査」では貧困線未満(国の貧困率基準と異なる)の世帯の子どもの割合は11.9%である。このうち、「子どもが病院を受診しなかったことがある」のは16%と貧困線以上世帯の倍以上の割合である。進学断念や学校中退が「ある、または可能性がある」は51%となっている。
社会保障関係の年度予算では、高齢化などによる社会保障費の自然増を14百億円削減して5千億円に圧縮する予算である。医療分野で950億円、介護分野で450億円を削減するとしている。医療保険制度では、70歳以上の高額療養費制度、75歳以上の後期高齢者の保険料、65歳以上の療養病床に入院する居住費が見直され、「協会けんぽ」への国庫補助も見直される。介護保険では、高額介護サービス費の負担上限額と総報酬割の導入により生活援助の人員基準・介護報酬が見直される。
国は2025年を目途に、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで住み続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進するとしている。都道府県ごとに地域医療構想の策定が進められているが、病床数の問題に矮小化され、病床機能の分類、在宅医療の整備などの具体性が示されていない。
2017年4月に介護報酬が1.14%引上げられる。介護報酬改定は利用者負担額に跳ね返るほか40〜64歳の支払い保険料へも影響する。介護職員の処遇改善に限っての臨時改定であり、その他のサービス単価は2018年度に見直される。
高齢者らが長期入院する療養病床の内14万床が2018年3月末で廃止されこととなっている。新たな受入施設は「医療内包型」と「医療外付け型」とされ、施設転換への猶予期間は3年ないし6年で検討されている。医療外付け型は、既存の介護付き有料老人ホームが想定され、補足給付は対象外となる。
介護保険の制度改定で混合介護の拡大に向けた議論が本格化する。事業者の創意工夫を促進し、サービスの多様化や事業者間の競争を促すとするが、自立支援や重度化防止など、本来の目的がないがしろにされる懸念もある。
本財団は、公益認定法人として、公益的事業の推進と経営の透明性、健全性を確保し、社会的役割の発揮に全力を尽くす。東日本大震災発生から6年、被災者・被災地が抱える問題はますます複雑化・深刻化している。社会的風化が表れつつある中、長期的視点で支援活動を行う。「保険医療2035年」も視野に「2025年医療・介護改革」への本格的な対応を進め、保健・医療・介護事業を一体のものとして、環境変化に対応した中長期事業計画を策定する。経営改善5ヶ年計画のもと、理事会機能強化をはじめとする組織変革、人事制度改革に着手し、職員教育・研修システムを充実させ、全職員が参画する事業運営に努める。