本財団は、設立趣意書(1950年2月)で謳う「単に疾病の治療または療養だけが対象になるものでなく、疾病のよって起こる社会的な疾患を匡正するまでに発展せしめなければならない。こうしてこそこの事業の新しい真の姿が発揮される。即ち広い意味の厚生事業にまで手を延ばさなければならない。またこういう諸活動と諸施設を一般大衆の福祉の増進という目標のもとに統一されれば医療事業もはじめて完成の域に達することと信ずる」を基本視点としている。
宮城厚生協会の諸事業が、地域医療と介護、福祉の充実に寄与し、地域住民の健康と健やかな生活を支え得ることを願い、日本国憲法が定める平和・人権・民主主義の原則と、国民の生存権と文化的生活の実現のために努力するものである。
我が国の65歳以上の高齢者貧困率は19.4%で、OECD加盟国で4番目の高さとなっている。18歳未満の子供の貧困率は16.3%と過去最高となり6人に一人が相対的な貧困層となっている。労働者の賃金は物価上場に追いつかず実質賃金は目減りし、生活保護の生活扶助基準も段階的に引き下げられている。貧困と健康は相互に関連し、低収入や失業による受診控えがしばしばみられる。
東日本大震災による被災者の医療・介護や障害者施設の利用料負担の免除措置は低所得者を中心に一部で継続されているが、被災直後の二割程度しか利用されていない。国の追加財政支援は2015年度で終了となり、減免措置の継続が危ぶまれる。
日本の社会保障費は、高齢者人口の増加や医療技術の進歩などにより年1兆円規模の自然増が必要とされるが、「骨太の方針2015」はプライマリーバランス黒字化のために、2018年度改定を含めて診療報酬のマイナス改定を強調している。2018年度には第7次医療計画及び第7期介護保険事業(支援)計画が スタートし、診療報酬と介護報酬の同時改定が行われる。
2016年診療報酬改定は、本体部分を0.49%引き上げる一方で薬価等を大幅に引き下げ、実質マイナス1.03%となる2回連続のマイナス改定となった。この14年間でも診療報酬は実質8.67%引き下げられている。日本病院協会調査では59.2%が赤字経営であり、医療経営は厳しさを増している。
2025年までに認知症高齢者が700万人を超え、2040年までに0~64歳人口が3,000万人減少すると予測される中で、二次医療圏毎の人口構造の変化や医療資源投入量に応じた地域医療構想が策定される。宮城県の地域医療構想「2025年の必要病床数」資料では医療資源投入量による病床区分のうち現在の慢性期病床7220.7床が3,891.5床~3,862.6床に減少する試算が示されている。また、2017年度末には、介護療養病床と医療療養病床の設置期限を迎える。
これらの削減対象とされる慢性期病床や療養病床には、医療的な要因以外にも自宅での介護力や経済的問題など様々な理由を抱える方も多い。そうした社会的背景を解決しなければ大きな混乱を招くと危惧されている。一方、国は「1億総活躍社会・緊急対策」で介護家族の離職をなくすと謳い、介護施設、在宅サービス、サービス付き高齢者住宅を50万人分増やすとして2015年補正予算で189億円が投じられている。それでも病床削減によって急増する「社会的介護の必要数」とはかけ離れた実態がある。
2017年度開始予定の新専門医制度は、より質が高く社会から信頼の得られる専門医養成を目的としている。プログラムはその多様性を確保し多くの病院が基幹病院として認められることが望ましいが、大規模病院が優遇的に取り扱われている。専門医養成は基幹型プログラムを有する医療機関に頼らざるを得ず、専門医取得後の職場・地域選択については個人の権利が保障されない可能性も指摘されている。医師確保と専門医養成は事業発展の基軸であり、慎重に対応を進めていく。
このような環境変化の中で、各々の事業所が地域における役割を明確にし、地域住民の健康と穏やかな生活を支え得る医療・介護事業に、真摯に取り組むことが根幹的な視点となる。
本財団は、公益認定法人として、公益的事業の推進と経営の透明性、健全性を確保し、社会的役割の発揮に全力を尽くす。東日本大震災発生から5年、被災者・被災地が抱える問題はますます複雑化・深刻化している。社会的風化が表れつつある中、長期的視点で支援活動を行う。「保険医療2035年」も視野に「2025年医療・介護改革」への本格的な対応を進め、保健・医療・介護事業を一体のものとして、環境変化に対応した中長期事業計画を策定する。理事会機能強化をはじめとする組織変革、人事制度改革を進めながら、職員教育・研修システムを整備し、全職員が参画する事業運営に努める。