2015年度

2015年度(平成27年度)宮城厚生協会 事業計画

はじめに

公益財団法人宮城厚生協会(以下、本財団とする)は、地域医療と介護の充実の為に、医療、介護 の質の向上、業務の効率化に取り組み、公益性とこれに伴う社会的責任を自覚し、法人に課せられた 社会的役割を果たす。

本財団は、設立趣意書(1950年2月)で謳う「単に疾病の治療または療養だけが対象になるものでなく、疾病のよって起こる社会的な疾患を匡正するまでに発展せしめなければならない。こうしてこそこの事業の新しい真の姿が発揮される。即ち広い意味の厚生事業にまで手を延ばさなければならない。またこういう諸活動と諸施設を一般大衆の福祉の増進という目標のもとに統一されれば医療事業もはじめて完成の域に達することと信ずる」を基本視点としている。

本財団は創立65周年を迎えた。今日においても事業計画の諸事業が地域医療と介護、福祉の充実に寄与し、地域住民の健康と健やかな生活を支え得ることを願う。そのためにも本財団は、日本国憲法が定める平和・人権・民主主義の原則と、国民の生存権と文化的生活の実現のために努力する。

Ⅰ. 事業経営をめぐる環境認識

2014 年6月に成立した医療介護総合確保法(以下、医療・介護総合法)は、公的医療・介護給付の縮小と不足分を「自助・互助」で補う医療・介護体制づくりをめざしている。特に、医療法改正の内容については、医療機関の機能分化を促進し、これまで各医療機関の理念や主体的力量、自己の選択によって成立してきた地域医療体制のあり方を変えるものとなる。

2014年度診療報酬改定と一連のものとして行われた医療法改正は、「2025年モデル」に向けた社会保障制度改革の一環であり、「医療提供体制の改革」は「機能分化・強化と連携」「在宅医療の推進」を重点課題として、病床機能報告制度や地域医療ビジョン策定等の政策と一体のものになっている。

今後、病床機能報告制度で集約されたデータを基に、地域医療構想とそれに基づく医療計画が作成される。計画実行のための協議の場の設置が定められているが、本財団としてもそれらの検討過程を注視し、地域医療・介護を担う立場から必要な意見等を積極的に発信する。

2014年度診療報酬改定は、消費税率引き上げ補てん分を除くと実質1.26%のマイナス改定となった。診療報酬引き下げと消費税率引き上げは、全国の医療機関に深刻な困難を与えている。日本病院会の「平成26年度診療報酬等に関する定期調査」によると、有効回答688病院のうち赤字病院の割合は58.2%から66.3%に増加、7対1入院基本料算定病院では赤字病院割合は61.3%から70.6%に増加している(2013年6月と2014年6月の比較)。

今回の診療報酬改定の最大の特徴は、効率的な入院機能の評価として、7 対1入院基本料の急速な絞り込みを行なったことにある。平均在院日数の算定方法変更や重症度、医療・看護必要度の厳格化、さらに急性期病院を含め全病床機能に在宅復帰率を求めるなど、機能分化による連携が制度化されるルールが敷かれた。中小病院や診療所による「主治医機能」の強化、また在宅医療での緊急往診の在宅看取りの重視など、「入院から在宅へ」の流れを誘導している。

2015年10月に予定されていた消費税率10%への再引き上げが国民の強い反対と実体経済の低迷により2017年4月まで先送りされた。これを理由に、2015年度介護報酬改定は実質マイナス4.48%となり、特に特別養護老人ホーム等の施設介護や通所介護サービスが大幅に引き下げられた。

地域包括ケアシステム時代の本財団の役割は、各事業所の診療圏で患者・利用者を中心にした行政機関や医療機関、介護事業所等との医療・介護連携(ネットワーク)づくりにある。また、高齢者人口の急増や認知症を持つ方が5人に1人となることが想定されており、まちづくりに取り組む諸団体や高齢者サービス等の各種団体・ボランティアとの協働の中で、本財団の公益事業の真価を発揮しなければならない。このような役割を通して地域住民の健康と健やかな生活を支えていく。

Ⅱ. 2015年度事業計画

本財団は、公益認定法人として、公益的事業の推進と経営透明性、健全性を確保し、社会的役割の発揮に全力を尽くす。また、全日本民主医療機関連合会に加盟する本財団事業所の医療活動と地域住民の願いに応える努力を支える。東日本大震災発生から4年、長期化する避難生活により健康悪化や孤独死が続いてる。震災復興に向けた支援活動を強化する。

本財団は、「社会保障と税の一体改革」「2025年あるべき医療・介護の姿」を踏まえながら、医療・介護等の社会保障をめぐる環境変化に対応した戦略的な「中長期事業計画 」を策定する。

その実行ために、理事会機能強化をはじめとする組織変革と人事制度改革及び職員教育・研修システムの確立を図り、全職員が参画する事業運営に努める。

  1. 患者の立場にたつ診療事業 、無料低額診療事業を行う
    • 地域医療支援病院の坂総合病院は、救急・紹介患者の受け入れ強化を行う。2015年3月竣工の「救急医療・地域連携・教育ステーション」の機能発揮に取り組む。
    • 高齢者入居施設「はなみずき」を軌道に乗せ、切実な地域需要に応える。
    • 地域での医療・介護の連携を題字にしながら診療所の活動を重視する。
    • 第二種社会福祉事業として無料・低額診療事業を拡大する。
    • 「医療相談」「生活相談」「介護相談」に積極的に取り組む。
  2. 保険予防・集団的健康管理事業を行う
    • 「協会けんぽ」健診事業の充実、専門性を生かした特定・保予防活動重視する。疾病予防事業として健康療法に取り組む。
    • 振動病・頚肩腕障害職業性腰痛、被曝者健診及び被爆二世健診、アスベトによる健康障害やじん肺に関する健康相談等労働者・准民の健康問題に取り組む。
  3. 医療従事者の研修教育、医療・看護学などの研修事業を行う
    • 東北大学病院及び東北大学大学院医学系研究科と連携し「コンダクター型総合診療医」の要請に向け、「みちのく総合診療医額センター」を充実し、地域連携を担う医師を育てる。
    • 専門研修のため国内外大学・研究機関への研修派遣を行い、地域医療に貢献していく。
    • 地域開放型研修の開催、宮城県病院勤務者向け認知症対応力向上研修会等の実施、薬学生病院実務実習、リハビリ関連や看護関連職種等の実習受け入れを行う。
  4. 訪問看護・介護、通所、在宅介護支援事業、障害者の医療・福祉事業を行う
    • サービス付高齢者賃貸住宅、小規模多機能施設等の住まいづくりを具体化する。ケアステーションの役割を高め、看取りなどに対応する事業規模を整える。
    • 24時間定期巡回・随時対応サービスなどの在宅サービスやリハビリテーションなど自立支援型サービスの強化に向け計画的な人材育成を行う。
  5. 地域住民との協力による県境増進事業を行う
    • 地域住民と協力して「健康相談会」「離島健診」「仮設住宅等での健康相談会」「路上生活者等の健康を守る健診・食事会」等の健康増進に取り組む。
    • 県内に避難している福島第一原発被爆者、被災住民の健診や相談会、双葉町からの避難者や県南地域での甲状腺エコー検診等に取り組む。
  6. 総合的な社会保障制度確立に関する事業を行う
    • 地域住民の健康権を守るため、社会福祉士などによる医療相談・生活援助に取り組む。
    • 社会保障制度が活かされるよう、医療・介護現場の気づきを大事にしながら改善援助に取り組む。