はじめに
当法人は設立理念である「無差別・平等」の考えのもと、いのちと暮しを守ることに力を尽くし、地域住民の健康と健やかな生活を支える事業に取り組み、日本国憲法が定める平和・人権・民主主義の原則と国民の生存権と文化的生活の向上のため、公益財団法人として役割を果たします。
理念
公正な医療と介護・福祉を提供し、安心して暮らせる地域づくりに貢献します
ありたい姿
- 力をあわせて患者・利用者につくしている
- 誇り、やりがい、成長する喜びをもって働いている
- 安定した経営をとおして社会的責務をはたしている
戦略
- 少子高齢社会に対応し、医療介護を一体的・包括的に前進させる
- 教育育成を通して、働き甲斐のある職場づくりを推進する
- 安心して地域で暮らせる切れ目のない医療介護を提供する
いのちを守る事業を営む法人として
ウクライナやパレスチナの戦争は、罪のない人々の命を奪い続けています。どこかで止めなければ憎しみは癒えることはありません。社会的・経済的に国や地域を超えて世界規模でその結びつきが深まる中では、当事者国だけでは解決できません。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序のもと、国際連合が本来の機能を果たし、直ちに停戦させることを願わずにはいられません。
新自由主義による資本主義経済は利益を追求し続け、経済活動は自然破壊による気候変動や格差社会の固定化により人権と生命を脅かしています。今、海外では気候変動危機を訴える若者の運動、化石燃料に対する投資を禁じる条例の制定などの活動が注目されています。永久凍土の崩壊、海面上昇、ハリケーンや大規模火災につながる自然破壊を止めることは、未来に向けた私たちの責務です。いのちの危機に対する問題として、常に意識しなければなりません。
2024年1月1日に石川県能登地方で発生した能登半島地震は、石川県の志賀町で震度7を観測するとともに、沿岸域では津波も観測され広い範囲で甚大な被害をもたらしました。発災直後には宮城県の要請を受けDMATを派遣、その後も職能団体等からの要請よる看護師派遣など、被災者のケアと復興に向けた支援活動に取り組んでいます。
日本は各地に活断層が存在し、世界でも有数の地震大国です。今後も大規模地震・災害に備えておかなければなりません。
Ⅰ. 事業経営をめぐる環境認識
医療と介護を取り巻く経営環境はかつてなく厳しくなっています。日本病院会、全日本病院協会及び日本医療法人協会の3団体による2023年度の経営調査によれば、赤字病院割合は7割を超え拡大傾向です。診療報酬は2002年から実質引き下げが繰り返され、2024年もマイナス改定です。経営の厳しさの最大の原因は不合理な診療報酬の引き下げにありますが、同時に事業と経営に必用な経営管理力量が、情勢の変化に追いついていないこともリアルに認識しなければなりません。新型コロナウイルスの影響から脱し切れていない中では、医師の働き方改革による労働時間の制約、看護職や介護職をはじめとする人財確保、最低賃金への対応、物価高騰による医療材料等の値上がり、どれもが展望の描きにくい課題です。公益財団法人として、地域から求められる医療と介護需要にどう応えていくのか、あらためて経営実態をしっかり踏まえ、改善すべき課題を明らかにし、全事業所、全職員が一体となって乗り越えなければなりません。
Ⅱ. 2024年度事業計画
宮城厚生協会は公益認定法人として、公益事業の推進と経営の透明性、健全性を確保し、社会的役割の発揮に全力を尽くします。
平和憲法の理念を高く掲げ、すべての人が等しく尊重される社会をめざし、これまでの歩みを発展させながら人権が大切にされる社会を目指します。地域住民とともに力を合わせ、より広範な人々と手を結び貧困と格差や少子高齢化社会がもたらす変化に真正面から向き合い、日常の医療・介護の実践、権利としての社会保障の向上を求めながら、地域の人々の健康と生活を支える事業活動を進めます。
泉病院の建て替え工事は能登半島地震の影響を受け、当初の予定から数カ月の遅れが生じていますが、新病院での診療開始は今年度中を目指します。
- 患者の立場にたつ診療事業、無料低額診療事業
- 坂総合病院は地域医療支援病院として入院を中心とした救急・専門医療を充実させ、新興感染症等(新型コロナウイルス)を含む5疾患6事業に取り組みます。行政機関と共に地域の医療機関や介護施設等との連携を重視します。また、坂総合クリニックの宮城県認知症疾患医療センターはその役割を担います。
- 各病院・診療所は、地域での医療・介護の連携を大事にし、規模や地域の医療環境などによって異なる外来機能と入院機能及び介護事業、これまでの感染症とともに新興感染症への対応も含め地域から求められる役割を担います。
- 長町病院附属有料老人ホームはなみずきは、低所得者や在宅医療を必要とした方でも入居できる高齢者入居施設として切実な地域需要に応えます。古川民主病院介護医療院は家族による在宅介護が難しい方の療養を支えます。
- 第二種社会福祉事業として、無料低額診療事業を重視します。
- 「医療相談」「生活相談」「介護相談」に積極的に取り組みます。
- 自然災害での医療支援・救援活動に取り組みます。
- 保健予防・集団的健康管理事業
- 「協会けんぽ」健診事業の充実をはじめ、専門性を生かした特定健診・保健予防活動を重視します。疾病予防事業としての運動療法、労働安全衛生法に基づく産業医活動に取り組みます。
- 振動病・頚肩腕障害・職業性腰痛、被爆者健診及び被爆二世健診、アスベストによる健康障害やじん肺に関する健康相談等、労働者・住民の健康問題に取り組みます。
- 医療従事者の研修教育、医学・看護学等の研究事業
- 東北大学と東北医科薬科大学との連携による医師・薬剤師養成、みちのく総合診療医学センターでの家庭医・総合診療医養成に取り組み、地域医療を担う医師・薬剤師を育てます。
- 専門研修のため国内外大学・研究機関への研修派遣を行い、地域医療に貢献します。
- 救急医療・地域連携などの地域開放型研修会の開催、救急救命士の認定研修、認知症対応能力の向上を目的とした研修会等を実施します。
- 医師・薬剤師・看護師・リハビリ職・社会福祉士・管理栄養士・歯科衛生士をはじめとした、医療・介護系学生の研修・実習の受け入れ、育成を行います。
- 訪問看護・介護、通所、在宅介護支援事業、障害者の医療・福祉事業
- 多職種連携で要介護高齢者・障害者を支えます。
- 悪性疾患への対応、障害児・重度の乳幼児への訪問、ケアステーションを核とした在宅看取りへの対応など、在宅での療養と介護を支えます。
- 医療度の高い遷延性意識障害者、重度の障害者の療養を支えます。
- 24時間定期巡回・随時対応サービス、通所介護、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションなど自立支援型サービスの計画的な人材育成を行います。
- 地域住民との協力による健康増進事業
- 地域住民と協力して「健康相談会」「復興公営住宅等での健康相談会」「路上生活者等の健康を守る健診・食事会」等の健康増進に取り組みます。
- 県内に避難している福島第一原発被曝者等の健診、被災住民の健診や相談会等に取り組みます。
- 総合的な社会保障制度確立に関する事業
- 地域住民の健康権を守るため、社会福祉士などによる医療相談・生活援助に取り組みます。
- 社会保障制度が活かされるよう、医療・介護現場の気づきを大事にしながら改善援助に取り組みます。
以上